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                          薄熙来裁判を検証する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                        

                           出廷した薄熙来被告  20013年8月22日

  

                                                                                                                    公判の内容については、こちら  

 

 

続報・最終

・判決が確定

 2013年10月25日に、山東省高級人民法院は、第1審判決を支持し、薄熙来被告の上訴を棄却する第2審判決を言い渡しました。中国の裁判は2審制なので、これにより、同被告の刑が確定したことになります。

 

続報8

・薄熙来被告が上訴

 2013年10月9日、山東省高級人民法院は、薄熙来被告が第1審判決を不服として提出した上訴を受理した、と公表しました。中国の裁判は2審制なので、第2審によって判決が確定することになります。

 以下、関連する問題について、刑事訴訟法の規定を紹介します。

上訴期限

 被告側が提出する「上訴」(原文のまま)期限は、判決から10日以内とされていますので、計算上は10月2日がその期限ということになります。しかし、10月1日~7日が国慶節の休日となったため、この期間を除き、10月8日が期限となったわけです。

 ちなみに、判決が言い渡された9月22日は日曜日でしたが、国慶節の休日との関係で、振替出勤日となったため、公判が開かれたのです。

第2審で公判は開かれるか?

 第2審で公判が開かれるのは、検察側が抗訴(原文のまま)した場合、死刑判決が出る可能性のある場合、ですが、今回はこの条件には当たりません。唯一、第1審が認定した事実、証拠に異議を申し立て、それが量刑に影響を及ぼす可能性のある場合、という条件が該当する可能性はありますが、これを満たすには相当強力な新しい証拠の提出が必要とみられています。

 これらの条件が満たされない限り、第2審は書面のみの審理となり、公判が開かれることはありません。

減刑はあるか?

 このように重要な事件の判決は、基本的に党の中央政治局が決めていますので、審理の結果で判決が変化することはありません。これまでの例を見る限り、上訴棄却となるはずです。そのため、通常は多くの場合、被告人もその事情を理解しており、上訴すること自体が珍しいこと、と言えます。

 ただし本件の場合は、公判についてのページでも説明したとおり、刑事裁判に当事者主義的な新しい要素を取り入れようとしている姿勢も見えますので、これまでとは違う展開になる可能性も否定できません。

 注目して判決を待ちましょう!

 

続報7

・薄熙来被告に無期懲役の判決 

 2013年9月22日午前、済南市中級人民法院は、薄熙来被告について起訴事実をすべて認め、無期懲役、終身の政治的権利剥奪、すべての個人財産没収という判決を下しました。

 

続報6

・薄熙来の公判開始

 2013年8月22日午前8時半、薄熙来被告の公判が、済南市中級人民法院で始まりました。当日は昼休み、休憩をはさんで、午後6時過ぎまで審理がおこなわれ、23日も引き続き午前8時半から開催されることになりました。

 23日も午前8時半過ぎから丸1日審理がおこなわれ、24日も同様に開廷することが告げられ、閉廷しました。

 公判の様子は、法院の公式ミニ・ブログで中継され、数十万人がアクセスした、と報じられています。

 外国メディアの多くは、これを異例な対応として、政治的意図があるのでは、などと解説していますが、これはそうではなく、近年進められている情報公開の一環にすぎません。ミニ・ブログによる公判中継は、2011年頃から始まっており、まだ全国に普及しているわけではありませんが、一部の地方、一部の裁判で実施されるようになっています。山東省はその先行地域ですので、あるいはこれが目的で、済南市が選ばれたのかもしれません。

(詳しい事情については、『はじめての中国法』第15章4を参照してください)

 

・起訴内容を全面否認

 入廷した薄熙来被告は落ち着いた様子でしたが、起訴内容を全面否認して、徹底的に争う姿勢を示しました。弁護人に先んじて発言するなど、気力も充実しているようで、みずから証人に対して質問した際には、侮蔑的な発言をして、裁判長にたしなめられるという一幕もありました。

 公判の内容については、全日程が終了した段階で、コメントすることにします。

 

続報5

・薄熙来の公判審理は8月22日に決定

 2013年8月16日夕刻、済南市中級人民法院は公告を掲示し、薄熙来事件の公判審理を、8月22日午前8時半から開催する、と通知しました。

 

続報4

・済南市人民検察院が起訴

  2013年7月25日に新華社が伝えたところによれば、山東省済南市人民検察院は、薄熙来事件についての公訴を、同市中級人民法院に提出したとのことです。同事件の裁判がどこでおこなわれるかについては、続報2にあるように、これまでいくつかの情報が流されていましたが、これでようやく確定したことになります。

 新華社の記事は、「法律が指定する管轄にもとづいて」と、伝えていますが、それではなぜ、続報2のような情報がまことしやかに流れたのでしょうか。

 ここで「法律」というのは刑事訴訟法のことですが、同法第24条は原則として犯罪行為地の法院に管轄権を与えています。しかし、これでは済南市は該当しません。ここでは同条ではなく、第26条の、裁判管轄が不明な事件について、上級人民法院は管轄する法院を指定することができる、という規定を適用しているのですが、この解釈にはちょっと無理があると言わねばなりません。

 どうしてそのような無理のある解釈がおこなわれているかについては、「薄熙来夫人裁判を検証する」のページの、「異地審判」についての説明を参照してください。

 薄熙来被告の罪状として伝えられているのは、収賄、横領、職権乱用の3つですが、起訴状が公表されているわけではないので、これ以外にないのかは確認できません。

 

・今後のスケジュール 

 じっさいに起訴手続きまで進んだことにより、今後のスケジュールがある程度明らかになりました。

 まず注目されるのは、公判がいつ開催されるかいう点ですが、刑事訴訟法の規定によれば、人民法院は公判期日を決定した場合、少なくともその10日前までに、起訴状副本を被告人と弁護人に送達しなければならない(第182条)ので、仮にこの手続きが7月25日中に完了したとしても、公判は最短で8月3日以降ということになります。

 次に、判決の言い渡しですが、これについては、公訴の受理後原則として2ヵ月以内、遅くとも3ヵ月以内(第202条)と定められています。死刑の可能性がある場合には、さらに延長することが認められていますが、本件の場合、死刑はないと予想されていますので、受理がいつになるかで前後しますが、近日中に受理されれば、10月末頃までには判決が下されることになります。

 

続報3

 2013年3月6日に、重慶市の張軒全人代代表がインタビューに応じ、重慶の法院は、2009年~2012年3月のあいだに下された、黒社会組織犯罪事件の第1審判決を見直していることを明らかにしました。これらの判決は83の事件、1297人の被告にかかわるもの、ということです。

 2012年2月9日の『重慶日報』が報じたところでは、当時すでに第1審判決が出ていた黒社会組織犯罪事件は266件、2000人余りの被告とされていますので、上記の数字はさらに増える可能性があると思われます。

 ところで、その『重慶日報』は、打黒闘争にかかわって約700億元の違法資産が没収された、と報道していましたが、判決の見直しが進めば、没収した資産の返却という問題が生じることになります。国庫にきちんと残っていればよいのですが、どうもそうではないようなので、この問題は重慶の財政に重い負担となってのしかかってくるかもしれません。

 

続報2

 2013年1月25日の香港紙『大公報』は、北京の消息筋からの情報として、薄熙来の裁判が1月28日から貴州省貴陽市の法院で始まる、と伝えました。公判は3日間連続で開催され、3月5日から始まる全人代会議の前に、判決が言い渡される予定だということです。

 ただし、この情報を確認しようとしたいくつかのメディアは、関係機関に問い合わせたところ、いずれも確認が取れなかったと伝えています。

 今のところ憶測の域を出ないこれらの情報ですが、ひとまずこれまでに伝えられたところでは、中央政法委員会の決定により、反党集団を組織した罪などで、判決は2年間の猶予期間つき死刑となり、すでに中央政治局常務委員会の承認もおりた、ということのようです。

 

 *結局、公判は開催されませんでした。憶測にもとづく誤報だったようですが、薄熙来が抵抗したために、混乱を恐れて急きょ中止になったという噂もあります。

 

続報1

 2012年10月26日の新華社通信が伝えたところによれば、開催中の全人代常務委員会会議は、重慶市人代常務委員会が薄熙来を全人代代表から罷免したことを受けて、資格喪失の決定をした、と伝えました。

 また、同日の新華社通信は、薄熙来の事件について、最高人民検察院が審査の結果、法律にもとづいて立案する手続きを進めている、とも伝えています。

 新華社のニュースはこれだけの短いものですが、もし起訴手続きまで最高人民検察院によっておこなわれるということになれば、第1審裁判が最高人民法院でおこなわれる、ということを意味しています。

 第1審裁判が最高人民法院でおこなわれるのは、いわゆる四人組、林彪反党集団事件以来のことになります。薄と同じ省級党委員会書記だった、陳希同北京市党委員会書記や、陳良宇上海市党委員会書記のケースと比較してみると、これはかなり重い扱いになります。

 ただし陳希同の場合には、逮捕については最高人民検察院が承認を決定しましたが、その後の司法手続きは北京市の人民検察院に移され、裁判は北京市高級人民法院でおこなわれています(判決は懲役16年)。陳良宇の場合はさらに1級低い扱いで、裁判も天津市第2中級人民法院でおこなわれました(判決は懲役18年)。

 このように、第1審裁判がどの級から始まるかが、判決内容に直結するわけではありませんが、仮に薄の裁判が最高人民法院でおこなわれるとすれば、その罪状は相当重大な内容になっている可能性があると考えられます。

 

・党の処分が決定

 2012年9月28日の新華社通信が伝えたところによれば、同日開催された中国共産党中央政治局会議は、中央規律検査委員会が提出した「薄熙来重大規律違反事件についての審査報告」を審議のうえ採択し、薄の党籍はく奪と公職解任の処分を決め、犯罪行為については司法機関の処理に委ねることに決定した、とのことです。

 これによって、近く裁判が開かれることになりました。

 

・広い範囲に及んだ処分

 この記事は合わせて、「薄熙来重大規律違反事件についての審査報告」の要旨も紹介していますが、そこで指摘されている薄の規律違反、違法行為は、大連市長時期にまで遡っており、中央規律検査委員会の調査がきわめて広い範囲に及んだことを示しています。もし、ここで指摘されている問題について、それぞれに違法行為があったとして訴追された場合には、相当な重罪となる可能性があります。

 まだ、起訴状の内容が公表されたわけではありませんので、報道から受ける印象にすぎませんが、これまでにおこなわれた夫人(谷開来)や、部下(王立軍重慶市前公安局長)の裁判が、英国人殺害事件を中心に罪状を狭い範囲に限定していたのとは、きわめて対照的な対応のように思われます。

 

裁判の注目点

 裁判は10月中にも始まるのではないかと予測されていますが、注目されるポイントをあげておきましょう。

① 死刑はあるか

 上記のような理由から、罪状がかなり広い範囲に及ぶことになりそうなため、メディアが予想していたような処罰よりは重くなる可能性もあるようです。たとえば収賄罪だけとってみても、大連市長時期以降となれば相当な額に上ると見られており、これまでの事例と比較しても、これだけで死刑という可能性も考えられます。

 一方で、これまでの類似の事件とされる、陳希同元北京市党委員会書記(懲役16年)や陳良宇元上海市党委員会書記(懲役18年)との比較で、死刑にはならず、これらより少し重い刑になるくらい、と予想する見解がメディアには多いようです。

② 政局への影響はあるか

 ただし、谷開来被告(猶予期間付き死刑)や王立軍被告(懲役15年)の場合は、上述したように、はじめから罪状が限定されていたこと、さらに裁判にあたっては、捜査に協力して積極的に罪を認め、また他人の犯罪を告発したことなどの減刑理由も加わっての判決でした。

 したがって薄熙来被告も、こうした減刑理由がなければ、極刑があるかもしれません。

 また、死刑を免れるために、彼が捜査に協力したり、他人の犯罪を告発したりすることがあれば、その影響が党中央にも及ぶ可能性は十分に考えられます。

 中央政治局の決定は、おそらく薄の判決も含めたものとなっていると思われますが、被告となることが決まった薄自身の対応次第では、まだ波乱要因は残されているように思われます。

 

 

【参考文献】

・ 田中信行「薄熙来と中国法の失われた10年」、『中国研究月報』、2013年9月号

     薄熙来事件を生み出したものは、胡錦濤政権時期における法治の衰退にほかならない。

     薄熙来の実践を通して、中国法の「失われた10年」を検証する。

・ 田中信行「劉涌の裁判と薄熙来」、『中国研究月報』、2012年12月号

     2003年に最高人民法院はさまざまな批判を封印して、劉涌黒社会組織犯罪事件を

     自ら再審し、死刑判決を下した。この裁判の背後で薄熙来と王立軍は・・・

・ 田中信行「薄熙来と打黒闘争」、『はじめての中国法』補論(有斐閣)、2013年3月刊

     温家宝元総理が指摘した、「文革の再来」とは・・・

 

 

 

 

 

 

 

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