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                              酒酔い運転は犯罪です

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                               

                                      ミュージシャンとして有名な高暁松は、2011年5月、酒酔い運転で拘役6ヵ月、

                        罰金4000元の判決を受けました。(北京市東城区人民法院の法廷で)

 

 

 

・すべてを起訴すべきか?

  2011年2月に全人代常務委員会第19回会議で採択された、刑法第8次修正案が5月1日から施行されました。これにともない、はじめて罰則が設けられた酒酔い運転に対しては、一律に拘役刑が適用されることになり、全国の公安機関はその対応に追われていますが、法律の運用をめぐって、早くも一部に混乱が生じているようです。

  5月初めの半月間の統計によると、全国で発生した酒酔い運転の摘発件数は、それによる死亡者数とも、それぞれ約35%も減少するなど、大きな効果を表していますが、公安機関は摘発された2000件余りについて、これをすべて起訴するための手続きに追われており、その対応を心配する声が出ています。そんななかで最高人民法院の関係者が、必ずしもすべてを起訴する必要はないと発言し、物議を醸しています。

 酒酔い運転については、2010年9月にパブリック・コメント募集のために公表された修正案が、「情状が悪質な」酒酔い運転は拘役に処する、としていたのですが、世論の厳しい声に押されて、採択された条文では、「情状が悪質な」という条件が削除されました。このため現在のところ一般には、酒酔い運転にはすべて拘役刑が適用されることになったと解釈されています。公安機関もそのように対応しようとしているのですが、最高人民法院から早くも異論が提出されたかたちで、最高人民法院に運用の基準を明確にする司法解釈を出すよう求める意見も出されています。

 

 

・中国の酒酔い運転とは?

  周知のように、日本の道路交通法では、飲酒運転には2段階あり、アルコール濃度の数値により規定される酒気帯び運転と、数値に関係なく、飲酒により正常な運転ができない状態にある酒酔い運転とに分かれています。酒気帯び運転の場合、呼気中のアルコール濃度が0.15mgないし0.25mgを基準値として違反点数が定められており、後者の基準値を超えると25点以上の厳しい点数が与えられ、免許停止になります。また刑事罰として、酒酔い運転は「5年以下の懲役又は100万円以下の罰金」、酒気帯び運転は「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」が定められています。

  中国には日本のような酒気帯び運転の基準はなく、酒酔い運転〔醉酒驾驶〕が定められているだけですが、どれくらい飲むと酒酔い状態となるのか、比較してみましょう。中国の規定では、アルコールの血中濃度が80㎎/100ml以上が、酒酔い運転の基準とされています。日本の基準を中国に合わせて置き換えてみると、呼気中0.25mgという数値は、50㎎/100mlに相当しますので、80㎎/100mlは日本でも酒酔い運転とみなされる可能性がある数値、と考えることができるでしょう。

  ただし、2011年4月に改正された道路交通安全法によれば、飲酒後に運転する行為そのものが行政処罰(15日以下の拘留)の対象とされるようになりましたので、アルコールの量に関係なく、飲酒後の運転は禁止されていると理解しなければなりません。

  酒酔い運転に適用される拘役という刑は、懲役刑と似ていますが、期間は1ヵ月以上、6ヵ月以下、毎月1~2日は帰宅することが認められ、労働に対しては報酬が支払われるなど、懲役刑よりは拘束度の低い内容となっています。日本は最高5年ですから、比較すれば甘い処分と言えますが、最短でも1ヵ月の拘束から免れることはできません。

 

 

 

 

 

                                         

 

 

 

 

・最高人民法院は飲酒寛容派?

  パブリック・コメント募集中には、さらに厳しい処罰を求める意見も多かったようですが、拘役刑にとどめるという方針まで変えることはできませんでした。しかし、これは酒酔い運転そのものに対する罰則なので、ほかに事故などを起こせば、その結果次第でさらに刑が加重されることになります。

  一方で、すべての酒酔い運転を一律に罰することへの反対意見も渋とく、公安機関の負担が大きくなりすぎるなどと指摘し、一律処罰論を撤回させようと目論んでいます。最高人民法院にはその支持者がいたようですが、はたしてそれが公式の見解となるのか、大いに注目されるところです。

 

 

 

 

 

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