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                          “人肉捜索” は禁止すべきか

 

 

 

  “人肉捜索” といっても、ヤミ市場に人肉が・・・というような話ではありません。これは、インターネットの検索などでは通常得られることのないような個人情報を、ネット・ユーザーを動員して入手しようとする行為を指す、新らしい中国語の表現なのです。

 このような行為が社会的な問題を引き起こしていることは、いまやインターネットが普及している国では普遍的な現象となっており、中国も論外ではありません。しかし、それがモラルとして批判されるべき行為であることは間違いないにしても、法律によって禁止すべきか、あるいは禁止するとして、どのように規制すべきかについては、共通の認識が成立しているとはいえない状況のようです。

 

 中国では、2010年5月に開催された浙江省人民代表大会に、「浙江省情報化促進条例」が提出されましたが、そのなかの情報規制の範囲について定めた条文が、 “人肉捜索” をターゲットにしているとして、論争を引き起こしていました。立法当局は、この条文はプライバシーの保護を目的とするもので、そうした批判は立法の趣旨を誤解したものだと反論していましたが、そのような疑念を招いたことは適切ではなかったとして、7月の人代常務委員会会議に再提出した草案では、この条文を修正し、該当部分を削除してしまいました。

 もちろん、これを批判する側も、 “人肉捜索” を無条件で擁護しているわけではありません。彼らは、 “人肉捜索”が口実として利用され、ネット規制が強化されることを危惧しているわけです。

 

 じつは、浙江省に隣接する江蘇省では、2009年に「徐州市コンピュータ情報システム安全保護条例」が、江蘇省人民代表大会常務委員会で採択され、成立しています。この条例についても、そのなかの規定が、 “人肉捜索” を禁止したもの、という批判が巻き起こり、論争となりましたが、条例が成立した後のことでしたので、文字通り「後の祭り」になってしまいました。

 浙江省で反対派が成果を得たのは、江蘇省の先行事例があったためかもしれませんが、このように敏感な社会の反応と、これに対する立法当局の慎重な対応の背景には、あるいはグーグル問題も何かしらの影響を与えているのかもしれません。

 それにしても “人肉捜索” という造語は、それが蛮行であることを強調したものかもしれませんが、いささかセンスに欠けると思いませんか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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