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                            合議廷改革が目指す方向

 

 

 

 

  最高人民法院は2010年1月、「合議廷の職責をさらに強化するについてのいくつかの規定」を公布しました。合議廷の職責については、すでに2002年7月に、最高人民法院が「人民法院合議廷の業務についてのいくつかの規定」を定めていますが、今回の規定は前の規定を改正するものではなく、これに追加、補充したものということです。

 内容は実務面での改善をはかった部分が多いので、あまり大きな問題はなさそうですが、注目すべき点としては、以下の2点を指摘することができるでしょう。

 

① 新しい共同討議の場を設けたこと

  重大、複雑な事件、あるいは合議廷内での意見が分かれた時などに、裁判長は院長または廷長に申請して、関係する裁判官を加えた共同討議の場を設けることができる、という、これまでなかった新しい制度が導入されました(第7条)。

 「関係する裁判官」とは何を基準に「関係する」とみなすのか、この規定からは判然としませんが、いずれにせよ、合議廷以外の裁判官も加えて、判決について討議することになるわけです。 前の規定では、このような事件の場合は、裁判委員会の討議にかけることができるとされており、それは人民法院組織法にも明記された制度でしたが、関係する裁判官を合議廷に加えて、共同で討議するという制度は、ここにはじめて登場したものです。

 1996年の刑事訴訟法改正を起点とする合議廷改革の方向は、合議廷の自立性を高め、合議廷がみずからの責任において判決を下すよう促すことに、力点が置かれてきました。裁判委員会に判決内容についてお伺いを立てる機会を少なくし、いずれは裁判委員会を不要のものとし、廃止する、というのが、暗黙の目標であったと理解されています。

 仮にそのような理解が正しいとすれば、今回の規定は、明らかにこれまでの合議廷改革とは方向を異にするものとみなさなければなりません。今回の規定は全体として、裁判委員会、院長、廷長などによる合議廷への指導を強化しようとする傾向がうかがえ、その最も突出した部分が、関係する裁判官を加えた共同討議の設定、ということであるように思われます。

 また、共同討議の対象となる案件には、「集団的紛争に起因する案件」という、かつてない定義の類型が加えられていることも注目されます。、「集団的紛争に起因する案件」という部分と、人民法院における集団的指導体制の強化という部分を結び付けると、何か今回の改革の意図が見えてくるような気もしますが、即断は禁物かもしれせん。

 

② 裁判官の責任追及に一定の基準を設けたこと

  合議廷改革の過程で、最高人民法院は1998年に、「人民法院裁判要員違法審判責任追及弁法(試行)」を制定し、合議廷の自立性を高めることと引き換えに、その責任も厳しく問う方針を立てました。その結果、責任追及をおそれた裁判官たちは、自らの責任を回避するため、以前にもましてみずから判決を下すことを放棄し、裁判委員会に判断をゆだねるという傾向を助長してしまったのです。

 今回の規定は、責任を追及しない場合を6項目に分けて規定することにより、逆に責任を追及する場合の基準を明確にしようとしていますが、これら6項目の内容は当然責任を負う必要のない範囲ともいえ、これによって裁判官に必要以上の重圧がかからない歯止めとなっているかは、疑問のように思われます。

 むしろ、「人民法院裁判要員違法審判責任追及弁法(試行)」の有効性が再度確認されたことに加え、上述したように、規定全体が集団的指導体制の強化という方向を向いていることを考え合わせれば、今回の規定をきっかけとして、合議廷が従来より自立性を高めるであろうという見通しは立ちにくいように思われるのですが。

 

 

 

 

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