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                                増殖する公捕公判大会

 

 

 

・犯罪撲滅闘争

  近年、中国の各地に広まりつつあるのが、公捕公判大会。公捕とは、公開の場で逮捕すること。公判とは、同じく公開の場で判決を言い渡すことを指しています。

  いうまでもなく、これは犯罪の増加に手を焼く当局が、一罰百戒のデモンストレーション効果を狙って開催しているものですが、刑事訴訟法上の手続きとの関係、ないし人権保護との関係で、問題がないわけではありません。

  これで思い出すのは、1983年に展開された犯罪撲滅闘争です。改革・開放政策の始まりとともに、沿海都市部では経済犯罪が急増したため、社会の不安定化が改革・開放政策の足を引っ張ることを恐れた鄧小平は、自ら犯罪撲滅闘争の指揮を執り、刑法、刑事訴訟法を改正して、「速やかに犯罪を処罰する」政策を実施しました。

  この犯罪撲滅闘争の過程で広まったのが、犯罪者の引き回しと公開処刑でした。引き回しといっても、首に縄をつけるようなものではなく、下の写真にあるように、トラックの荷台などに乗せて、街中を宣伝して回るのが一般的な方法でした。公開処刑は、運動場などに市民を集めて、その面前で銃殺刑を実行するという、かなり残酷な見世物となったため、国内のみならず諸外国からも、相当厳しい批判が寄せられました。

 

 

 

 

 

 

 

                                             

                                 1985年、広州駅前で   『南方都市報』2008年11月3日

 

 内外からの厳しい批判を受けて、1988年に最高人民法院、最高人民検察院と公安部は合同で、「被告人、被疑者の街頭引き回しを断固禁止するについての通知」を出しました。これを契機として、その後は引き回し、公開処刑ともまず目にすることはなくなったようですが、近年ふたたび、これに類似する公捕公判大会が、各地で行われるようになっています。

 

・公捕公判大会

  公捕公判大会が、1980年代のデモンストレーションと異なるのは、市内の広場などに市民を集めて実施している点ですが、数千人、あるいは数万人が集められる場合もあるようです。

  写真①、②は、2008年9月18日に、貴州省桐梓県のスポーツセンターでおこなわれた公捕公判大会。この場で、124名の犯罪容疑者が逮捕され、51名の被告人に判決が言い渡され、それを数万の市民が見守りました。

 

 

 

 

 

 

 

                           写真①                        写真②

 

 写真③、④は、2009年3月26日に湖南省郴州市の東風広場で開催された公捕公判大会。6万人を超える市民が見守るなか、56名が逮捕され、45名に判決が言い渡され、1名に銃殺刑が執行されたとのことです。

 

 

 

 

 

 

        

                           写真③                        写真④

 

 「公捕」については、すでに1983年の時点で、最高人民検察院は「採用すべきではない」という、やや腰の引けた表現ではありますが、禁止する見解を示しています。これらの文献を引用するまでもなく、引き回しのみならず、公捕公判大会などが、刑事訴訟法に違反している(公判での判決言い渡しは公開が原則ですが)ことは、当局も十分に承知しているはずですが、背に腹はかえられぬ、ということなのでしょう。

  しかし、現在すすめられている司法改革との関係でいえば、やはり公安主導の体制強化という方向性は否定できず、中国的法治の将来に危うさを感じないわけにはいかないようです。 

 

  【関連項目】

    法院は“なぜ”信頼されていないのでしょう

 

 

 

 

 

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