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                               覇王条項には罰金も

 

 

 

 

 2011年7月6日、北京市第一中級人民法院は、Windows XPの使用許諾契約を、「覇王条項」に該当し無効だと訴えた市民の主張について、これを認める判決を下しました。

 覇王条項〔覇王条款〕とは、消費者に一方的な不利益をもたらすような契約条項のことをいう、新しい造語です。

 

 

 

 

 

 

                                            

 

                                           「返品したいんですけど」、「ワシにどけというのか」  『中国青年報』

 

 

1.マイクロソフト裁判

  河南省鄭州市在住の市民は、2006年7月に750元で購入したWindows XPをインストールしようとしたところ、同意を求められる「使用許諾協議」とその「補充協議」のなかの一部条項が、覇王条項に該当するものであることを発見しました。そこで彼は、これら協議事項のうちの28項は無効であるとして、人民法院にその無効確認と、マイクロソフト社が謝罪を公表するよう求める訴訟を、北京市第一中級人民法院に提出しました。

 マイクロソフト社はこれに対し、協議の内容は消費者の権利を一方的に侵害するものではなく、同種のソフトで一般的に採用されている協議内容と大きく異なる内容ではなく、こうした内容はすでに商業上の慣例として認められているし、もしユーザーが同意できないときは返品という選択肢も用意されている、と反論しました。

 2011年7月6日、中級人民法院は審理の結果、28項のうちの4項は、同社が負うべき民事上の責任と法定の義務を軽減ないし免除するもので、消費者権益保護法および契約法に照らして無効であると認める判決を下しました。ただし、謝罪を公表する点については、請求を認めませんでした。

 おそらく、マイクロソフト社は控訴するでしょうから、判決が確定するまでにはまだ時間がかかるでしょうが、その成り行きが注目されるところです。

 

2.南方航空賠償請求訴訟

  中国で覇王条項が社会的に注目されるきっかけとなったのは、2009年の南方航空賠償請求訴訟だと言えるでしょう。これは、2008年に南方航空がトラブルによって遅延した責任を問われて、9名の乗客から損害賠償請求訴訟を起こされた際、輸送契約約款の一部が覇王条項にあたるとして、問題になったものです。

 この話は実に細かいのですが、南方航空の約款では、遅延責任の賠償額は運賃の30%となっているので、ここでは240元がその額ということになりました。ところが、規定はさらに細かく、10元以下の単位は四捨五入することになっていたので、南方航空は乗客に対し、200元を支払うと伝えたのです。これに対し乗客は、勝手に40元を減額するのはけしからんと怒って、訴訟に踏み切ったということです。

 「四捨五入」規定が覇王条項にあたるかどうかで争われたこの事件は、その後報道がないので、まだ裁判が続いているのか、確認できません。紛争金額を考えれば、たぶん和解したのではないでしょうか。

 

3.富士康でも

  また2010年に、従業員連続飛び降り自殺事件で有名になった富士康では、その原因のひとつとして、従業員に課せられる企業秘密の守秘義務にかかわる覇王条項の存在が指摘されています。富士康は、一定の職位以上の社員に対して守秘義務にかかわる協定書の提出を要求しているのですが、これには違反した場合、60万元という高額の支払い義務が生ずると規定されています。

 2010年4月には、この協定に違反したとして2名の元従業員が商業機密漏えい罪に問われ、深圳の法院から有罪判決を受けました。2名の従業員は、富士康を退職した後、いずれも比亜廸(BYD)自動車に就職したのですが、これが退職後2年以内に競争相手となる企業への転職を禁じた協定に違反したというわけです。

 

4.罰金もあります

  日本ではもちろん覇王条項という言い方はありませんが、考え方は共通するところがあり、消費者契約法第10条*にその規定があります。中国では消費者権益保護法第24条**に、同じ趣旨の規定があります。

 消費者権益保護法は1993年に定められたものですが、2010年10月に国家工商行政管理総局は、「契約違法行為監督処理弁法」を公布し、契約にかかわる違法行為について、違法所得金額の3倍(ただし3万元を上限とする)以下の罰金を課すると定めました。これによって違法な契約については、民事上の責任のみならず、行政上の責任も追及されることになったわけです。

 

  * 消費者契約法第10条

    民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務

       を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの

       は、無効とする。

 

  ** 消费者权益保护法第24条

     经营者不得以格式合同、通知、声明、店堂告示等方式作出对消费者不公平、不合理的规定,或者减轻、免除其损害消费者

   合法权益应当承担的民事责任。

     格式合同、通知、声明、店堂告示等含有前款所列内容的,其内容无效。

 

 

 

 

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