top of page

          国有株比率は“なぜ”引き下げなければならないのでしょう

 

 

 

1.株式会社の現状

  1980年代の国有企業改革が、思いのほか進展しなかった反省を受けて、1990年代には早々に株式会社制度の導入が決定され、1993年に株式会社制度について定めた会社法が制定されました。社会主義の中国に、資本主義のシンボルともいえる株式会社が誕生したことに、世界は驚きましたが、それでも中国の国有企業に大きな変化が生じたわけではありません。

  国有企業改革の狙いは、所有権と経営権を分離し、所有者である国から企業自身に経営権を委譲することにより、停滞する生産性を向上させ、企業を活性化させることに尽きます。1986年に、それまでの国営企業という呼称に代え、国有企業と呼ぶように改めたのも、そうした改革の意図を徹底させるためでした。

  株式会社制度への転換がはかられたのは、国を株主とすることにより、経営者の立場から身を引かせることができれば、所有権と経営権の分離を実現できる、という考え方にもとづくものです。

  会社法の施行後、国有企業は順次、株式会社に改組されていますが、すでに15年を経た現在でも、所有権と経営権の分離という目標の実現には程遠い現状です。

  中国の大型国有企業は一般的にグループ会社化されており、グループの頂点にある親会社は、ほとんど株式会社に改組されていません。株式会社になっているのは、その子会社や孫会社なのですが、これらの株式会社の株は、大半を国や親会社が保有しています。この国や国有企業が保有する株を国有株と呼びますが、国や国の指導を受ける国有企業が株主として過半数の株を保有し、経営権を確保したままなのが、株式会社の現状なのです。

 

2.なぜ国有株を売却しなければならないのでしょうか

  下の表は、2005年の上海証券取引所に上場されている会社の、株式構造を分析したものです。国有株支配株

式会社というのは、支配株主が国有株の株主(国または国有企業)である株式会社で、国有企業から改組された株式会社であることを示しています。非国有株支配は、民間の株式会社です。上海証券取引所に上場している企業の約70%は、元国有企業の株式会社であることが分かります。

  問題は、これら国有株支配株式会社の非流通株が、平均で約60%を占めていることにあります。しかもそのうちの75%(全体の45%)くらいが、筆頭株主によって保有されているのです。国有株支配株式会社の非流通株はすべて国有株なので、この表は、国が(直接および間接に)過半数の株を保有し、経営権を確保したままという現状を、数字で証明しています。  

 

                           上海証券取引所上場会社の株式構造      2005年

 

 

 

 

 

 

 そこで中国政府は、この状況を改善するため、証券市場で国有株を売却する政策の実施に踏み切りました。いうまでもなく、国の持ち株比率を引き下げることにより、所有権と経営権の分離を徹底することがその狙いです。言い換えれば、会社法制定の本来の目的を、これによって実現しようというわけです。

  国有株の売却は、2001年にも1度実施されましたが、株価が急落したため、3ヵ月で中止されてしまいました。

  この失敗を教訓に、周到な準備を経て2005年に再開され、2006年から実際の売却が始まりました。予定では、ほぼ3年間のあいだに、国有株比率が60%から50%に引き下げられるはずでした。

  ところが、周知のように2007年には米国のサブ・プライムローンに起因する金融危機が中国経済にも波及し、中国の証券市場も大きな打撃を受けました。そのため国有株の売却も、2008年後半には、ほぼ休止状態に陥る結果となりました。

  以上のように、2度目の国有株売却も、現状では挫折したように見えますが、じつはこの挫折は金融危機のせいだけではないのです。

  下の表は、2006年以降の国有株売却状況を半期ごとにまとめたものです。売却可能株数というのは、上場会社ごとに作成された売却計画をもとに、各社が政府に申請して売却を認められた株数です。売却株数実績は、これらの株が実際に市場でどれだけ売却されたかを示しています。この表が示すように、金融危機の前後で、売却株数は増減しており、その影響を受けていることを示していますが、注目すべきは、株価が非常に高い水準にあった2007年上半期まででも、売却可能株数の10%ほどしか実際には売却されていないという事実です。   

 

                                 年間売却株数の予測と実績       単位:億株

 

 

 

 

 

 

 

 

 つまりことことは、政府の指導を受けた上場会社は、その指示に従って売却の手続きまでは取ったものの、最終的にはそれを売らなかった、ということを示唆しています。むろんそれは、上場会社自身の判断というよりも、その支配株主である政府管轄部門の意向に従うものであったのでしょう。要するに、政府内で、改革を担当する国有資産監督管理委員会や財務部などと、株式会社を管轄する担当部門とのあいだに、政策上のコンセンサスが成立していないということなのではないでしょうか。

 

3.新しい政策は打開策となりうるでしょうか

  2009年6月に国有資産監督管理委員会と財政部などは、「国内証券市場の国有株を社会保障基金に充当するための実施弁法」を公布しました。この「実施弁法」は、国有株流通化改革策定後に新規上場した会社を対象に、公開発行株数の10%を、全国社会保障基金理事会に譲渡しなければならないと、定めています。

  上に述べた国有株売却政策と異なるのは、国有株を市場に放出するのではなく、社会保障の基金に組み入れるとしたこと、売却する株数を公開発行株数の10%と一律に定めたこと、の2点です。  

  社会保障基金への組み入れは、証券市場の現状に配慮したものでしょう。また、基金の充実という積極的な目的もあるでしょう。さらに注目すべきは、売却株数を一律に定めて義務化した点で、これは上に指摘した上場会社の背信行為を防止し、確実に国有株比率を引き下げるという、改革側の強い意志を示したものにほかならない、と思われます。

  さて、この新しい政策の登場により、今度こそ国有株比率を引き下げは実現できるでしょうか。

 

 

 

 

bottom of page