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       人民代表大会は“なぜ”権力機関というのでしょう

 

 

 

1.三権分立ではありません

   中国の国家体制は三権分立体制ではなく、権力機関、行政機関、検察機関、裁判機関の4機関による分業体制をとり、最高の権力機関である全国人民代表大会にすべての国家権力が集約される、中央集権的な民主主義体制(中国語では民主集中制という)を採用しています。具体的には、権力機関は人民代表大会、行政機関は人民政府、検察機関は人民検察院、裁判機関は人民法院と、それぞれ呼ばれています。

 ついでながら、三権分立ではありませんから、「司法権の独立」はありません。人民法院は同級人民代表大会の監督を受けることになります。ただし一方で、裁判の独立も保障されており、「人民法院は法律にしたがい、独立して裁判権を行使する」(憲法第126条)ものとされています。(この点について、詳しくはこちら)

 

2.「議行合一」とは? 

   人民代表大会は国民から選挙を通じて選ばれた代表によって構成される議会であり、全国人民代表大会は、わが国の国会に相当しますが、たんなる議会=立法機関ではありません。これを権力機関と称するのは、それが議会と行政の役割とをともに兼ね備えた(中国語で議行合一という)、社会主義国家独自の機関だからです。

  権力機関の原型は、レーニンが指導したロシア革命によって誕生した、ソ連(ソヴェト社会主義共和国連邦)における「ソヴェト」であり、さらにそれを遡ると、1871年のパリ・コミューンにたどり着きます。すなわち、マルクスが『フランスの内乱』でこれを行動する議会として評価し、エンゲルスがその序文で、「プロレタリア独裁の光景を知りたければ、パリ・コミューンを見よ」と書いたように、パリ・コミューンは労働者国家における議会のひな型と位置づけられたのです。

  余談になりますが、ここで明らかなように「コミューン」という概念は、共産主義における理想の共同社会というイメージを持っており、毛沢東が自ら命名したことで知られる「人民公社」の「公社」は、「コミューン」の中国語訳です。人民公社もまた、それまでの集団農業組織である生産合作社(協同組合)を改組して、基層の行政機関である郷人民政府と生産合作社を統合した、政社合一の組織という特徴をもっていました。

 

3.行政機関は? 

   以上の説明で、権力機関が議行合一の機関であることは理解されたと思いますが、そうすると上記4機関のうちの行政機関はいったい何者なのでしょうか。というのは、権力機関が立法権と行政権をともに行使するのであれば、行政機関は不要ということにならないでしょうか。

  じつは、社会主義国家における行政機関は、三権分立体制における行政機関とは異なり、行政権を行使するのではなく、行政の執行機関と位置づけられているのです。というのも、行政権は権力機関に帰属するとはいえ、議会の代表は人民から選ばれた議員で構成されており、日常的な行政までカバーできるわけではないので、これを行政機関がカバーするという関係になっているのです。

   最後に、憲法第57条の規定にあるように、全国人民代表大会は「最高の国家権力機関」です。これを、全国人民代表大会は「国家権力の最高機関」です、と訳さないように注意してください。念のため。

 

 

 

 

 

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